部下や後輩をもったことがない私の、相手の許し方
新卒で出版社に入り2年、同じく出版社に転職して4年。
会社員経験はこれだけだ。
新卒時代は4つ上の先輩について仕事していた。
次の出版社では雑誌チームに所属。編集長+4人の小さな部署で、4人の年齢はバラバラだったけど上下はなく和気あいあいだった。
というわけで、部下や後輩をもったことがないまま今に至る。
上の立場として意見を言ったり、相談に乗ったり、ものを教えた経験がないのだ。フリーランスになってからは、なおのこと。
ただ時々、私が先輩だったらこうするのかな、という場面に出くわすことがある。
ある若いライターさんと一緒に仕事をしたとき。ちょっとした駆け引きをされた。そのやり方がえげつないと感じた。
一度仕事した時はそんなことなかったのに。調子に乗って変わってしまったのだろうか。もう別のライターさんにお願いしたほうがいいかも、と考えた。
でも思い直した。
ここで関係を切ってしまったら、このライターさんとはこの先仕事することはないだろう。切ったことで何かを感じてくれればいいが、そうとはかぎらない。お金にまつわることだったので、いろんな意味で余裕がないのかもしれない。
「許す!」と思った。
まあ、上からでえらそうだが、本当にそう思った。
というのも私自身、いろんな人に許されてここまで来ている。今仕事している著者さんも編集者さんも、私にあきれたことは数知れないだろう。ミスもいっぱいしたし、迷惑もかけてきた。
身がすくむ思いをしながらも、挽回しようと思ってやってきた。その「がんばり」の部分を見てくれて、それ以外のミスや未熟さは水に流してくれているのだ。
きっと上司や先輩という人たちは、そうやって部下や後輩を育てている。
たくさんミスをさせ、適宜アドバイスし、成長を見守るのが仕事なのかもしれない。
私も若きライターさんに、少しはそうありたい、と思った。
気になった件には触れず、いつも通りにメールを返した。そうしたら、スピーディーかつ良質な原稿をあげてくれた。なんの問題もなかったのだ。
ライターさんはこの過程で何かを感じとったかもしれないし、感じとっていないかもしれない。
でも私は、関係を切ってしまわなくてよかった、人のミスを許せない人間にならなくてよかった、となんだかホッとした。